2013年11月28日

石垣島自然ガイド講座「アンパルヌミダガーマユンタの世界」座学

[石垣島] ブログ村キーワード

今回は石垣島自然ガイド講座の3回目「アンパルヌ・ミダガーマ・ユンタの世界」の座学の模様をお伝えします。登野城(とのき)ルリ子さんを講師にお迎えして、11月20日(金) 午後7時~9時 健康福祉センター視聴覚室で民俗学に視点を置いて行われました。と言っても、正直、タイトルの意味がサッパリお分かりにならいと思いますので、まず意味のご説明を致しましょう。

早めについたので準備のお手伝いしました
アンパルポスター

言葉は八重山の方言ですが「アンパルヌ」は「アンパル(網張干潟)の」で、「ミダガーマ」は「目高蟹(コメツキガニの種類)」のユンタ(八重山列島に伝わる古代歌謡)。ユンタは楽器を使わず、男女が掛け合いで農作業や普請などの共同作業の時に謡うというのが最大の特長で、語源は「結い歌(労働歌)」と言われていますが、「誦(よ)み歌・読み歌」からの転訛説もあります。何れにしろ「網張のコメツキガニの歌」となるわけです。

児童文化サークル「くにぶん木の会」登野城ルリ子会長
登野城ルリ子さん

講師を勤められた登野城さんによりますと、この歌はアンパルに住む沢山のカニが擬人化されて出て来るわけですが、その内容はショーニンヨイ(生年祝)を歌ったものらしいです。ショーニンヨイ(=マリドゥシィとも言う)は、数え年で13歳・25歳・49歳・61歳・73歳・85歳・97歳と12年ごとに回ってきます。昔は女性は25歳までには嫁いでいたので13歳が実家で行われる最後のお祝い(十三祝)でした。

会場には 名の方が集まって真剣に聞いています
講習風景

この歌の成立時期ははっきりしておりませんが、昔は健康を神仏に祈願する祝いとして各家庭で行われたようで、その作業分担の歌が「アンパルヌ・ミダガーマ・ユンタ」ということになるようです。但し、当時は大方の民は資力もなく61歳で祝っていたようです。現在のショーニンヨイはホテルなどで行われるようです。

ショーニンヨイ(マリドゥシィ)の準備品
準備品

氏族のショーニンヨイは3・4年もの準備を掛けて行われていたようです。お客に出すご馳走(豚・魚・瓜・酒・菓子)の準備や、衣装・薪・油・調味料・膳・食器の準備、また余興のための踊りの練習なども一ヶ月前には始まっていたそうです。やはりこちらの神に対する行事には力の入り方が違います。そして祝いの数日前には男たちが桟敷造りに精を出し、女性は食事の準備で大わらわとなります。

アンパルヌミダガーマユンタ

1 あんぱるぬ                          網張の
  (うり)                              ウリ(合いの手)
  みだがまでんどー                      目高蟹(コメツキガニ)である
  ハーイーヘー                         ハーイーヘー
  マタハーイヘー                       マタハーイヘー
  マタハーイーヘー                     マタハーイーヘー
  マタハーイーヤーヌ カーヌーシ           マタハーイーヤーヌ カーヌーシ

2 すーやぴしやうり しむぬやーかい           潮は干いており 下の家に
3 すーぬんちゃー ういぬやーかい            潮が満てば 上の家に
4 しぃむぬやーや からぶきでんどー           下の家は瓦葺きである
5 ういぬやーや がやぶきでんどー            上の家は茅葺きである
6 みだがーまぬ まりどしでんどー             目高蟹の生まれ年である
7 かんかじぃぬ ぶどりぬあんどー              蟹ごとの踊りがあるよ
8 だーなーかんや さんしぃきにんじゅ            ダーナ蟹(オキナワアナジャコ)は桟敷係
9 ぎぃだーすかんや じゅんびにんじゅ           ギダース蟹(ギダーサオカガニ)は準備係
10 ぴんぎやーかんや ぴーふきにんじゅ        ピンギャー蟹(キンセンガニ)は笛吹き係
11 ぎがらんかんや たいくうつにんじゅ           ギガラン蟹(ハマガニ)は太鼓打ち係
12 むみんぴきかんや さんしんにんじゅ         ムミンピキ蟹(シオマネキ類)は三味線係
13 やくじゃまかんや ぶどりにんじゅ            ヤクジャマ蟹(ヤクジャーマ)は踊り係
14 あぶしかんや きょんぎんにんじゅ           アブシン蟹(アシハラガニ)は狂言係
15 ちいなんかんや どらうちにんじゅ           チナン蟹(モクズガニ)は銅鑼打ち係
16 ばだれーかんや ぼーうちにんじゅ           バダレー蟹(タイワンガザミ)は棒打ち係
17 ふさまらーかんや しーしかびにんじゅ        フサマラー蟹(ケブカオオギガニ)は獅子被り係
18 がしめーかんや ほーちょーにんじゅ         ガーシメー蟹(ノコギリガザミ)は包丁係
19 やふちやんかんや くばんにんじゅ          ヤフチャン蟹(イワオオギガニ)は供饌係
20 ふのーらかんや じんばいにんじゅ           フノーラ蟹(ソデカラッパ)は配膳係
21 ぱるまーかんや きゆーずにんじゅ          パルマー蟹(ツノメガニ)は給仕係
22 もみんぴきかんや じうたにんじゅ           モメンピキ蟹(シオマネキ類)は地謡い係

(左が原歌、右が訳。『登野城村ゆんた集』より)

ショーニンヨイはこのように沢山の人が絡み、縁者たちの絆を確かめるものでもありました。この歌はカニ族が力を合わせてコメツキガニの晴れの祝いを準備する様子を表しているのです。昔を馳せる講義を伺った後は、皆でこの歌を歌いましたが、中々難しい歌です。ちょっとリズムを覚えきれませんでした。

年表サムネイル
年表

実際の講義では、登野城さんが体験されたショーニンヨイの話しも織り交ぜられ、半世紀ほど前の祝いの様子がより詳細に語られました。また厳しい人頭税の話しなどもありましたが、こちらでは書ききれないので、興味のある方は是非、宮城文さんの「八重山生活史」やこちらのわらべ歌を収めた登野城ルリ子さんの「ばがー島のわらべうた」などで勉強してみては如何でしょう。

僕がちょっと驚いたのは、居酒屋ぶんじのマスターにこの話しをした後に、普通にこの歌を歌ってくれたのにびっくりしました。これまで島人の中でも余り聞いたことがなかったので、根付いた文化の深さに改めて感じ入った次第です。

<講義情報>
 講 義:「アンパルヌミダガーマユンタの世界」現場学習
 講 師:登野城ルリ子さん
 日 時:11月29日(金) 午後1時30分
 集 合:八重山博物館
 申 込:山崎雅毅 090-6785-8692(事前申し込み必須)
 費 用:無 料(駐車場代実費)
  H P:http://bit.ly/18l1DNx (アンパルの自然を守る会)

よかったら!プッシュ頂ければ(^o^)/。
にほんブログ村 地域生活(街) 沖縄ブログ 八重山地方情報へ
にほんブログ村

FBページにも いいね でご参加を
「ゆんたくガーデン」

非営利任意団体
時の旅人プロジェクト

石垣ツアーヘルプ

宜しかったら以下の「ブログランキング」にもプッシュお願い致します。
---------------------------------------------------------------------------
にほんブログ村 地域生活(街) 沖縄ブログ 八重山地方情報へ


facebook
twitter
mixi
youtube
Social Icon ブログパーツ



同じカテゴリー(講座・講習・体験)の記事